白雪リンの読書感想文(O・ヘンリー「1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編」その4)

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マジマジョ 白雪リン(演:隅谷百花(現おはガール))の偽物


前3回に引き続き、O・ヘンリーの短編を紹介していきます。

今回紹介するのは、「水車のある教会」です。

この作品は、短編集に収録されている中で一番の長編です。とは言っても30ページほどの物語なので、読書が苦手な方にとっても負担のない量だと思います。

そして何度読んでも良い話です。
出来すぎと言われればそれまでですが、善行が良い人を引き寄せる、その中にたまたま一番大切な人が含まれていた、そういうことなのだと思います。
これまでの人生経験から、様々なものに引力が働くように、人と人との引力も存在していると信じています。
魔法界の私達と引かれ合ったモモカ、そしてそのモモカによって邪魔界から魔法界へ引き戻されたシオリ、そしてモモカの愛に邪魔の闇から解放された邪魔彦、といったように。

私達の話はさておき、この物語の主人公エイブラム・ストロング、通称エイブラム神父の善行の一つを紹介します。

彼は訳あって、一人娘のアグレイアを失ってしまいます。そしてその娘を偲ぶため、彼が経営する製粉工場から「アグレイア印」の小麦粉を売り出します。その小麦粉は極上で、当然価格も最高級です。薄利多売の安いものだったらちょっと嫌ですけど、最高級品に自分の名前が付いているなんて、考えただけでも素敵ですよね。

そして善行と言うのは、災害が起きて人々が困った地域に、その最高級品の小麦粉を無料で惜しげもなく送る、というものです。
もう本当に美談ですよね。困った人々のために、失った娘さんの名前を冠した小麦粉が助けてくれるのです。エイブラム神父にとっても慰めになったでしょうし、助けられた人々にとっても、その心の中に感謝の気持ちと共にアグレイアという娘さんが生き続けるのです。

そんなエイブラム神父と、エイブラム神父のいるレイクランズという土地にチェスター嬢が訪ねてくることで、物語が大きく動き始めます。

でも私は、当初このチェスター嬢があまり好きにはなれませんでした。何かこう、人の心の中にズカズカ入ってくるというか、繊細さを欠いている、というような印象を持ってしまったためです。

しかし私は、ラストでこのチェスター嬢が一気に大好きになりました。
それは、恋人にプロポーズの返事を待って欲しいと電報を打とうとする場面です。待って欲しい理由が本当に素敵なのです。こういうことを言える娘が、今の世の中に果たして何人いるかしら?
またこうしたセリフを思い付く作者の感性が、本当にすごいと思いました。

(「その5」へ続く)

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