白雪リンの読書感想文(O・ヘンリー「1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編」その3)

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マジマジョ 白雪リン(演:隅谷百花(現おはガール))の偽物


前2回に引き続き、O・ヘンリーの短編を紹介していきます。

まずは「靴」という物語です。

ちょっとしたいたずらが全く思わぬ方向に、そして大きな事態に発展してしまうことって間々ありますよね。この物語はその最たるものだと思います。

「靴」というシンプル過ぎるタイトルのとおり、物語も中盤あたりまで比較的静かに進んでいきます。
しかし主人公のいたずら心がきっかけで、まあ嫌でも事態が大きく動いてしまいます。しかも人様の人生が台無しになってしまいそうなほどに。
どうやっても事態を打開するような妙案がないと絶望する中、主人公が最後に1件電報を送るところで物語は終わります。

主人公の妙案が功を奏することを願うばかりですが、本当にこれは続きが気になります。おそらく正式な続編は存在していないのでしょうが。
でも続編を読者に渇望させたら、これはもう書き手の勝ちですよね。それくらい面白いです。

この物語にもあるように、ひょっとしたら今までの歴史の中でも、必死の裏工作が功を奏して発展してきた意外な事業がいっぱいあるのかもしれません。

続いて「心と手」という物語です。

この物語が伝えているのは、どんな相手にも尊厳を持って接する、そして必要以上に人を傷付けない、そういう姿勢の大切さではないでしょうか。
私に身近な例で言うなら、邪魔界のプリンスである邪魔彦にも救いの手を差し伸べた、モモカの例でしょうか。

この物語に登場する人々は、会話をしている人々はもちろん、その会話を聞いている表には出てこない脇役の人々、その全てが優しいのです。
もし一人でもそうでない人が登場すると、途端にこの物語は成立しなくなります。一人の優しさから始まった優しさの連鎖が、全て断ち切られてしまうのです。
しかしそうした綱渡りの上の危うい優しさが、最後まで無事に目的を遂げて着地することができます。

O・ヘンリーの短編を読んでいて安心するのは、どんな状況でも、そしてそれが本来救いのないようなシチュエーションであっても、彼の手にかかれば何かしら人として救いがあるシチュエーションに変わってしまうことだと思います。
それ以上傷付けられたらダメになってしまう。そういった状況にまで登場人物を追い込まないのが、彼の作者としての優しさなのだろうと思います。

またこうした物語をわずか7ページ足らずの短編で味わえるのは、最高に贅沢なことで、稀有な体験だと思います。
短編小説(特に今作のように10ページにも満たないもの)って、下手をすると薄っぺらい等と評されがちですが、決してそうではないと強く思わせてくれる一作です。

(「その4」へ続く)

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