白雪リンの読書感想文(O・ヘンリー「1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編」その2)

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マジマジョ 白雪リン(演:隅谷百花(現おはガール))の偽物


前回に引き続き、O・ヘンリーの短編を紹介していきます。

まずは「蘇った改心」からです。

主人公のジム・ヴァレンタイン、愛称ジミーは金庫破りです。調子の良い男という感じはしますが、根っからの悪人という感じはしません。金庫破りはしても、人殺しその他はやっていないのでしょう。まあ金庫破りの罪で服役して、出所したその日にまた金庫破りをするのはどうかと思いますけど(笑)。

そんな彼は、ふとしたきっかけで金庫破りから足を洗い、靴屋を開業して成功します。事業を成功させたのは彼の才能でしょうし、勤勉さ抜きにそうした成功はないでしょうから、やはり根っからの裏社会向きの人間という訳ではないのでしょう。
それに、結婚相手のみならずその父親が彼に惚れ込むところをみると、彼の人としての魅力も類稀なるものと想像がつきます。

しかしまさか、結婚間近というところであんな事件が起きるとは。前科者が改心する物語を読むとき、読者には必ず何かしら不安がつきまといますよね。

しかしジミーの真価は、この読者が不安な中で最高潮に発揮されます。
自らの危険を顧みず、自分の子どもではなく、これから(まだなっていない)姪っ子になるであろう子どもたちのために人肌脱ぐとは。今までの描写が必要なくなるほど、彼の人間性が滲み出ていました。

それにしても、彼と結婚間近だったアナベル嬢は、彼の素性をどこまで知っていたのでしょうか?彼を尊敬していたとはいえ、あの場面であんなことを振りますかね。これはミステリーです。

そしてラストです。捜査官ベン・プライスは格好良すぎますね。実は彼、物語の中で5回しか言葉を発していません。それでも彼の彼の人間味、格好良さが伝わってきます。男と男の世界って感じです。

次に、「楽園の短期滞在客」です。

ラストは意外な展開からの意外な展開でした。でもひょっとしたら、彼らのような素性を隠してバカンスしている人達って、実はけっこう多いのかもと思いました。果たしてどれくらい紛れ込んでいるのか、これは考えただけでもミステリーです。目に見えるもの全てが真実ではない、ということでしょうか。

ただ究極に嫌味な見方をするなら、ここで2人が惹かれ合ったのは、周りから浮いていたからでしょうか。ある意味この楽園の中では異質な存在でしょうからね。
いや、周りの人々の様子から、それはなさそうですかね。お互いの誠実さ、勤勉さが滲み出ていたのでしょう。そこに惹かれ合った結果でしょうね。そう願いたいです。

(「その3」へ続く)

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