白雪リンの読書感想文(カミュ「異邦人」その2)

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マジマジョ 白雪リン(演:隅谷百花(現おはガール))の偽物


前回に引き続き、カミュの「異邦人」の紹介です。

前回は主人公ムルソーの常識のなさに焦点を当てましたが、今回は彼が不合理かどうかという点から考えます。
結論から言うと、必ずしも彼が不合理とは言えないということです。私のような人間、いや魔法使いには理解できませんが、一応彼には彼なりに考える一貫した合理性があります。

それを理解するのに最もわかりやすいのが、物語終盤です。ネタバレを極力避けますが、そこで彼は裁判にかけられます(どんな罪で裁かれるのか、詳細その他は読んでからのお楽しみです)。
我々の言うところの合理性・合理的な行動とは、裁判の場面で言ったら、裁判員の心証を良くすることで自らの罪を少しでも軽くしようとすることだと思います。

しかし彼の場合はそうしません。
彼は、裁判員による自分の心証を良くするために内心と違うことを言ったり、余計なことを言ったりということを決してしません。そもそも彼は、そうしたことに苦心すること自体を極端に嫌うのです。
彼にとって合理的とは、そうした繕いのない状態のことを言うのでしょう。一時の出まかせで自らの罪を軽くすることよりも、自分の流儀を貫き通す、これこそがある意味彼にとって合理的な状態なのです。
我々には理解し難いものの、その行動が合理的でないとは必ずしも言い切れない理由はこのためです。

彼のこうした姿勢が最も際立つのが、裁判の終盤でしょう。これまでネタバレを避けようと努力してきましたが、ネタバレ抜きに書くことはもう無理なので、早くもバラシてしまいます(笑)。
彼は裁判で、検事から殺人の罪で死刑を求刑されます。
本来であれば、正当防衛とは言えずとも過剰防衛くらいで、少なくとも死刑を求刑されるほどの凶悪事件ではなかったはずなのに、です。
しかし、言わば誤解も手伝って自分に死刑が求刑されたこの切羽詰まった状況でも、相変わらず彼は自分を繕うための自己弁護を一切しません。
あろうことか、犯行の動機を聞かれ「それは太陽のせいだ。」と答えてしまいます。

誰がどう考えても、この回答が自分の状況を不利にするのは明らかです。人を殺しておいてこうした回答をすれば、意図せずともその人間の凶悪さが際立ってしまいます。または法廷を侮辱している、真摯に対応していないと思われても仕方ありません。

しかしこのときの彼は、必ずしも嘘をついていないのです。

この部分の考察も物語の重要な核かと思いますので、詳細は次回に回したいと思います。

(「その3」へ続く)

2件のコメント

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