リンとカイト(その5)

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マジマジョ 白雪 リン(演:隅谷百花(現おはガール))
     小田原 カイト(演:下川恭平)      

・・・・・・・・・・

コン、コン、コン。
「私です…」
「え、し、白雪!?」
まさか自分の部屋へリンが訪ねてくるとは思っておらず、カイトは動揺します。
「ど、どうぞ~」
思わず裏返ってしまった声で、カイトはリンを部屋へ招き入れます。
「失礼します…」
そこでリンが目にしたのは、いつもの元気なカイトではなく、高熱に喘ぐただの病人でした。自分が想像していた以上にカイトの容態は悪そうです。
「白雪…、移るから…あんまり近付くなよ…」
こんなときまでリンを気遣う優しいカイト。
(カイトくんに風邪を移したのはこの私なのに…ホントに昨日のこと覚えてないんだ…)
リンは罪悪感で押し潰されそうになります。
「では、お粥を作ってきましょう、お台所をお借りしますね…」
目尻を少し拭いながら、リンはカイトの部屋を後にします。

・・・・・・・・・・

トントントントン!
下階から聞こえてくる包丁のリズミカルな音が、カイトの耳に心地よく響きます。
高熱で朦朧とする意識の中、大好きなリンがキッチンに立つ姿を思い浮かべ、カイトはまどろみの中へ沈んでいきます…。

・・・・・・・・・・

ガチャッ…
ドアノブが再び傾く音で、カイトは目を覚まします。
「カイトくん…出来ましたよ…」
まだまどろみの残る眼前に映るものを確認して、カイトは絶句します。
(確か白雪は、お粥を作ると言って部屋を出たよな?)
今目の前に差し出されたものは、お粥とは程遠い、何か得体のわからぬ物体でした。
(こんなの食べて大丈夫なのか…)
判断力に乏しい現在の脳でも、身の危険は察知できます。
『食欲がまだ戻ってこないなぁ、少し経ったらいただくよ。』
そんな言い訳を心の中で練習していたカイトの眼に、ふとリンの指先が映ります。
右手を包んでうまく隠しているように見えますが、左手の人差し指には血の滲んだバンドエイドが巻かれています。
いや、よく見ると、他の指にも痛々しい切り傷が。
白雪を思わせるリンの白く柔らかな細い指が、傷だらけになっているのです。
(白雪…、あんなになるまで…俺のために…)
(ごめんよ…、白雪…)
先ほど言いかけた言い訳を飲み込み、カイトは目の前の異物を口の中に放り込みます。
高熱のため、(幸いにも?)既に味覚は麻痺しています。ただ、ジャリジャリと砂を思わせる食感は、間違いなくカイトの脳に危険信号を送り続けています。
それでもカイトはスプーンを止めません。
それを見ていたリンは、急に涙をポロポロ流しながら、
「ごめんなさい、カイトくん…」
「いや、白雪、これめっちゃ美味いぜ?」
「それはわかっています、自信作です!」
味音痴なリンに、魔物を作ってしまったという自覚はありません。
「それじゃあ…」
「カイトくんが風邪を引いてしまったのは…、実は…、私のせいなんです…」

(「その6」へ続く)

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